出張のガソリン代の精算方法と規程の決め方

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自家用車で出張したときのガソリン代の精算を、実費・距離単価・定額の3方式で比べ、規程に書く項目、通勤手当との違い、よくある間違いを表で整理します。

自家用車で出張や営業に出た社員のガソリン代は、何をいくら払うかを会社が決めなければ精算できません。電車の運賃のように「調べれば一つの正解が出る」性質の費用ではないからです。この記事では、精算方法を実費・距離単価・定額の3方式に整理し、どれを選ぶかの判断基準、距離単価方式で決めておく4つの数字、出張旅費規程に書く項目、確認でつまずきやすい点までを順に扱います。想定しているのは、マイカー利用が常態化しているのに精算のルールが決まっていない中小企業の経理・総務・経営者の方です。

通勤のガソリン代と出張のガソリン代は別の話

同じ「マイカーのガソリン代」でも、通勤で使う場合と出張で使う場合は、社内の扱いも税務上の扱いも分けて考えます。ここを混ぜると、通勤手当の中で出張分まで見ようとして、金額の根拠が説明できなくなります。

通勤のガソリン代出張・業務のガソリン代
何に対する支払いか自宅と勤務地の往復業務上の移動
社内の根拠通勤手当の規程出張旅費規程・旅費交通費の取扱い
支給の形毎月定額で給与とあわせて支給することが多い出張ごとに精算することが多い
判断の物差し非課税となる限度額が距離の区分ごとに定められているその旅行について通常必要と認められる範囲か

通勤手当については、マイカーや自転車で通勤する人の非課税となる1か月当たりの限度額が、片道の通勤距離の区分などに応じて定められています。区分と金額は改正で動くため、自社の支給額を決めるときは国税庁のタックスアンサー「No.2585 マイカー・自転車通勤者の通勤手当」(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2585.htm )で最新の内容を確認してください。

一方、出張で支給する旅費が給与として課税されるかどうかは、限度額の表ではなく「その旅行について通常必要であると認められるか」という考え方で判断されます。その範囲の考え方は所得税基本通達9-3(法第9条《非課税所得》関係)に示されています。所在は通達の目次(https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/01.htm )から確認できます。

つまり出張のガソリン代は、通勤手当の限度額に合わせる必要はありません。代わりに「なぜその金額になるのか」を社内の規程で説明できる形にしておくことが求められます。

精算の方式は3つ。先に選ぶ

ガソリン代の精算方法は、実務上は次の3つに整理できます。会社によって呼び方は違いますが、決めているのは「何を根拠に金額を出すか」です。

方式金額の出し方向いている会社弱いところ
実費方式給油した領収書の金額を精算する出張が少なく、1回ごとの移動が長い私用分と業務分の切り分けが難しい
距離単価方式業務で走った距離に社内で決めた単価を掛けるマイカー利用が日常的にある単価の根拠を先に決める必要がある
定額方式月額や1回あたりの定額を支給する移動の範囲と頻度がほぼ一定実態とずれたときに見直しが要る

多くの会社が距離単価方式を採るのは、実費方式に私用分の問題があるからです。給油は業務と私用の区別なくタンク単位で行われるので、領収書の金額がそのまま業務分にはなりません。走った距離であれば、業務の移動だけを取り出して数えられます。

実費方式を採るなら、業務専用の車両に限るなど、切り分けの手順まで決めてください。手順のないまま領収書だけ集めても、確認する側は判断できません。

距離単価方式で先に決める4つの数字

距離単価方式は「走行距離 ÷ 燃費 × ガソリン単価」で1回分の金額を出すのが基本形です。このうち会社が決めておくのは次の4点です。数字そのものは会社ごとに違ってよいので、決めた根拠を規程か付表に残すことが大切です。

  1. 走行距離の測り方。地図サービスの経路検索の距離によるのか、走行メーターの差によるのか。どちらでもよいのですが、混在させると差し戻しの原因になります。経路検索を使うなら、どのサービスを使うかまで決めておくと確認が早くなります。
  2. 燃費の置き方。車種ごとの実測値を使うか、全社で共通の値を使うか。車種別は公平ですが登録と更新の手間がかかるので、対象の車が多いなら区分をいくつかにまとめる形が現実的です。
  3. ガソリン単価の基準。いつの価格を使うか。給油した日の実売価格、月初に会社が決める単価などがあります。毎回変えると計算が煩雑なので、一定期間は固定して定期的に見直す形が扱いやすいです。
  4. 上乗せ分の扱い。距離に応じて発生するのは燃料代だけではなく、タイヤやオイルなどの消耗もあります。これを単価に含めるかどうかを決め、含めるなら業務に必要な費用として説明できる範囲にとどめます。

高速道路の通行料と駐車場代は、ガソリン代とは別の実費として領収書で精算するのが分かりやすい形です。単価に含めてしまうと、有料道路を使った出張と使わなかった出張の差が説明できなくなります。

出張旅費規程に書く項目

マイカーの業務使用は、支給の話だけでは終わりません。事故が起きたときにどうするかまで含めて決めておきます。

項目決めること
業務使用の許可誰の承認で使えるか。事前の届出を要するか
対象とする車両任意保険の加入条件、車検・点検の確認方法
精算の方式実費・距離単価・定額のどれか。併用するならその境目
単価と燃費の表金額と適用期間。見直しの時期
距離の測り方経路検索か走行メーターか。証拠として何を残すか
付随する実費有料道路・駐車場・洗車などをどこまで見るか
公共交通機関との関係電車で行ける区間にマイカーを使ってよい条件
事故・違反の扱い費用負担、報告の手順、保険の適用関係

とくに任意保険は、業務使用が補償の対象かを会社として確認してください。通勤・通学のみを使用目的とする契約では、業務中の事故が補償されないことがあります。

消費税の扱いも確認が要ります。従業員等に支給する出張旅費・宿泊費・日当等のうち、その旅行について通常必要と認められる部分については、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる取扱いがあります(出張旅費等特例。国税庁の質疑応答事例 https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shohi/18/08.htm )。走行距離に応じて支給する金額がこの特例の範囲に入るのか、ガソリンスタンドの領収書に基づく課税仕入れとして扱うのかは、支給の形によって判断が分かれます。方式を決めたら、顧問税理士か所轄の税務署に取扱いを確認してから運用を始めてください(要確認)。

よくある間違い

  • 通勤手当と出張のガソリン代を1つの支給にまとめる。月額の通勤手当に「出張の分も込み」としてしまうと、通勤分と業務分の内訳が説明できません。支給の根拠が違うので、規程も支給の欄も分けます。
  • 領収書だけを集めて金額を決める。給油の領収書は業務分と私用分が混ざったタンク単位の記録です。距離単価方式を採るなら、領収書は給油の事実の確認に使い、金額は距離から出します。
  • 単価を決めた日から見直さない。見直しの時期を規程に書いておかないと、実態と離れた単価が何年も残ります。
  • 距離の測り方を人に任せる。経路検索と走行メーターでは距離が変わるので、決めていない会社では同じ出張に違う金額が並びます。
  • 保険の使用目的を確認しない。精算のルールだけ整えて保険を見ていないと、事故のときに会社と本人の双方が困ります。

まとめ

  • 通勤と出張ではガソリン代の根拠が違います。通勤手当には距離の区分ごとの非課税限度額があり、出張の旅費は「通常必要と認められる範囲か」で判断されます。
  • 精算は実費・距離単価・定額の3方式。マイカー利用が日常的なら距離単価方式が扱いやすく、距離の測り方・燃費・単価・上乗せ分の4点を先に決めます。
  • 規程には計算だけでなく、任意保険の条件、有料道路や駐車場の扱い、事故時の手順まで書きます。消費税の取扱いは支給の形で変わるため、運用の前に専門家へ確認してください。

まず自社の社員が今月どれだけマイカーで移動したかを書き出し、3方式のどれが実態に近いかを見るところから始めてください。