出張の領収書をなくしたときの精算

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旅費規程に基づいて支給する出張旅費・宿泊費・日当は、帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます。領収書の紛失が効く支出と効かない支出の分かれ道、規程に書いておく紛失時の扱いを整理します。

出張から戻った社員が「領収書をなくした」と言ってきたとき、最初に決めるのは再発行を頼むかどうかではありません。その支出を、会社が社員に支給する出張旅費等として処理しているのか、社員に立て替えさせた会社自身の買い物として処理しているのかです。前者なら消費税の仕入税額控除は帳簿のみの保存で認められ、領収書は要件に入っていません。後者なら適格請求書等の保存が要るので、紛失がそのまま控除の可否に効きます。この記事は、この分かれ道と、旅費規程に紛失時の扱いをどう書くかを、中小企業の経理・総務の方に向けて整理します。

分かれ道は「支給」か「立替払い」か

同じ宿泊代でも、処理の形が違えば保存するものが変わります。

処理の形消費税の控除のために保存するもの領収書の紛失が効くか
旅費規程に基づいて支給する出張旅費・宿泊費・日当(実費精算を含む)一定の事項を記載した帳簿のみ効かない
会社が用務先へ直接対価を支払ったのと同視し得る立替払い帳簿と、社員から徴求した適格請求書等効く(一定のものを除く)

国税庁は、帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる取引として、税込価額3万円未満の公共交通機関による旅客の運送、使用の際に回収される入場券等、従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費・宿泊費・日当・通勤手当などを挙げています(国税庁 No.6496 仕入税額控除をするための帳簿及び請求書等の保存 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6496.htm )。

規程に基づいて支給した分は、領収書が無くても控除できる

国税庁のインボイス制度に関するQ&A(問107-2 実費精算の出張旅費等)は、社員に支給する出張旅費、宿泊費、日当等のうち、その旅行に通常必要であると認められる部分の金額について「一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます」としています。そのうえで、この支給には「概算払によるもののほか、実費精算されるものも含まれます」と明記しています(国税庁 消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A 問107-2 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/107-2.pdf )。

実費精算でも支給は支給だ、という点がここで効きます。「実費精算だから領収書が無ければ控除できない」は、この範囲では当たりません。

同じ問の注は、帳簿のみの保存で控除が認められる「その旅行に通常必要であると認められる部分」について、所得税基本通達9-3に基づき判定するため、所得税が非課税となる範囲内で認められるとしています。通常必要と認められる範囲の決め方は出張日当の計算方法と金額の決め方で扱っています。

注意が要るのは、「領収書が要らない」であって「記録が要らない」ではないことです。帳簿には一定の事項を記載する必要があります。誰が、いつ、どこへ、何のために行き、いくら支給したのかが残らなければ、支給として処理していること自体を示せません。

立替払いの分は、支払先と金額で分かれる

同じQ&Aの参考は、実費精算が会社により用務先へ直接対価を支払っているものと同視し得る場合には、通常必要と認められる範囲か否かにかかわらず、他の課税仕入れと同様に、帳簿と社員から徴求した適格請求書等の保存により仕入税額控除を行うとしています。そのうえで、3万円未満の公共交通機関による旅客の運送など一定の課税仕入れに当たるのであれば、帳簿のみの保存で認められるとしています。

立替払いとして処理している分でも、全部が紛失で止まるわけではありません。

  • 税込3万円未満の電車・バスの運賃は、もともと帳簿のみでよい
  • 使用の際に回収される乗車券・入場券等も、帳簿のみでよい
  • 基準期間の課税売上高が1億円以下、または特定期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者は、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの課税仕入れのうち税込1万円未満のものについて、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で控除できる(前出 No.6496)

残るのは、ホテル代のように、この線から外れる立替払いです。領収書の紛失が消費税に効くのは、ここだけです。タクシー代の扱いは出張のタクシー代はどこまで精算できるかに、インボイス制度の全体像は出張旅費とインボイス制度にあります。

紛失の申告が来たときの順序

  1. どちらの処理かを決める。旅費規程に支給の定めがあり、その範囲の支出なら、支給として処理する
  2. 支給として処理する分は、精算書の記載で足りる。用務の日程・行き先・目的と支給額を残す
  3. 立替払いの分で、3万円未満の公共交通機関・回収される乗車券・少額特例のどれにも当たらないものだけ、適格請求書の再交付を依頼する
  4. 再交付が受けられないときは、支払の事実を示すもの(カードの利用明細、予約サイトの決済履歴、宿泊施設の発行する明細)を集め、何が無いのかを精算書に書き残す
  5. 法人税の側では、領収書は保存すべき書類に含まれ、原則として確定申告書の提出期限の翌日から7年間(欠損金額が生じた事業年度は10年間)保存しなければならないとされています(国税庁 No.5930 帳簿書類等の保存期間 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5930.htm )。紛失は、この保存ができていない状態です。損金になるかどうかは個別の事実で判断されるため、金額が大きいものは所轄の税務署か税理士に確認してください

旅費規程に書いておく4つ

紛失のたびに判断が割れるのは、規程に扱いが書いていないからです。決めるのは4つです。

  1. 提出させるもの — 紛失の旨と、支払の事実を示す代わりの資料を精算書のどの欄に書かせるか
  2. 線 — いくら以上の立替払いなら再交付の依頼を必須にするか。3万円未満の公共交通機関のように、もともと帳簿のみでよいものを除いて決める
  3. 承認 — 誰が認めるか。金額で承認者を分けるか
  4. 繰り返したときの扱い — 同じ人が繰り返す場合に、立替払いをやめて会社の支払に切り替えるか

あわせて、どの支出を支給として処理し、どの支出を立替払いとして処理するのかを規程本体で決めておくと、紛失時に迷いません。規程全体の組み立ては出張旅費規程の作り方に、精算書の欄の作り方は旅費精算書の書き方にあります。

よくある間違い

  • 紛失を理由に、支給として処理している分まで精算を止める。帳簿のみの保存で控除できる範囲まで止めることになります
  • 逆に、立替払いの分まで「特例があるから領収書は要らない」と考える。用務先への直接の支払と同視し得る場合は、適格請求書等の保存が要ります
  • 出金伝票を作れば消費税の控除も通ると考える。社内で作る書類は、適格請求書等の保存の代わりにはなりません
  • 公共交通機関の特例を、金額にかかわらず当てはめる。税込価額3万円未満という線があります
  • 受け取った領収書を紙のまま保管する前提で規程を書く。電子で受け取ったものの保存は旅費精算と電子帳簿保存法の対象です

まとめ

  • 領収書の紛失が消費税に効くかは、支給として処理しているか、立替払いとして処理しているかで決まります
  • 旅費規程に基づいて支給する出張旅費・宿泊費・日当は、実費精算であっても、通常必要と認められる部分は帳簿のみの保存で控除できます
  • 立替払いのうち、3万円未満の公共交通機関・回収される乗車券・少額特例に当たらないものだけが、再交付の依頼と代わりの資料を要する範囲です

規程に支給と立替払いの線を引き、精算書に紛失の欄を置けば、紛失の申告は例外として処理できます。Tabikan は規程に書いた支給の条件を設定として持ち、そこから外れた精算だけを人に見せます。