出張申請書の書き方と承認フローの決め方

公開

出張申請書に法定の様式はありません。規程から逆算した項目一覧、事前申請を必須にする範囲、承認の段数の決め方、申請と実績がずれたときの扱いを表で整理します。

出張申請書は、出張に行く前に目的・日程・行き先・おおよその費用を届け出て、承認を受けるための社内書類です。ひな形は探せばいくらでも見つかりますが、そのまま使うと「書かせているのに後の精算で足りない」「承認が滞って出発に間に合わない」という形になりがちです。この記事では、申請書に載せる項目を出張旅費規程から逆算して決める手順、事前申請を必須にする範囲の線引き、承認を何段にするかの決め方、申請と実績がずれたときの扱いまでを順に扱います。想定しているのは、出張の手続きをこれから整える、あるいは回りきっていない手続きを立て直したい中小企業の経理・総務・経営者の方です。

出張申請は何を決める手続きか

出張申請書に法令で決まった様式はありません。会社が自社の判断で作る社内書類です。ですから「正しい書き方」は一つではなく、自社の手続きの中で申請に何を担わせるかで中身が変わります。実務で申請が担っているのは、次の3つです。

  1. 行くかどうかを決める。 その用件のために移動する必要があるかを、出発前に上長が判断する。
  2. 後の工程の前提を確定させる。 出張先・期間・移動手段・宿泊の要否が決まれば、規程のどの区分を当てはめるかが決まる。
  3. お金と手配の準備をする。 仮払いが要るか、切符と宿を誰が取るかを、経理と総務に伝える。

社内で一番よく抜けるのは2です。申請を「行ってよいかの伺い」としてだけ扱うと、帰ってきてから区分の当てはめを一件ずつ確認することになり、締めのたびに差し戻しが出ます。

申請で確定させる項目は、規程から逆算して決まる

載せる項目は、出張旅費規程で「何によって支給額が変わるか」を見れば決まります。規程が区分に使っている条件が、そのまま申請書の必須項目になります。

申請書の項目何を確定させるか抜けると起きること
出張の目的・用件業務上の必要があったこと後から必要性を説明できない
出張先(地域)地域区分のある規程での支給額精算のたびに区分の確認が発生する
出発と帰着の日時日当の日数、宿泊の要否日数の数え方でもめる
移動手段と経路交通費の上限、等級の可否上限を超えてから発覚する
宿泊の有無と宿泊地宿泊費の区分上限超過の申告が後になる
同行者の有無同行時の扱い(日当・部屋)二重の支給や重複した計上
概算の費用仮払いの要否と金額立替が個人の負担として残る
手配の担当(本人か会社か)費用の計上先と証憑の集め方領収書の行方が分からなくなる

逆に、規程で区分に使っていない項目は、申請書に置かなくても精算は回ります。「あると親切」で欄を増やすほど提出は遅くなるので、迷ったら規程を開き、その欄が支給額を変えるかどうかで判断してください。

事前申請を必須にする範囲を決める

全件を事前申請にするか、一部を届け出だけで済ませるかは、決めておかないと部門ごとにばらつきます。線引きに使える基準は3つです。

  • 宿泊の有無で分ける。 日帰りは届け出のみ、宿泊を伴うものは事前の申請と承認を必須にする。件数の多い会社で回しやすい形です。
  • 金額の目安で分ける。 概算が一定額を超えるものだけ事前承認にする。基準となる額は自社で決め、規程に書きます。
  • 行き先で分ける。 海外や長期の滞在だけを別扱いにし、国内の近距離は簡略化する。

どれを選んでも、急な出張の扱いを同じ節に書いておくことが要点です。「前日や当日に決まった出張は事後の申請を認め、帰着後◯日以内に提出する」と決めておかないと、例外が口頭で流れ、記録の残らない出張が増えます。

承認は何段にするか

承認の段数は、多いほど慎重になるのではなく、多いほど止まります。決め方は次の順です。

  1. 止める権限を持つ人を一人決める。 出張の要否を実際に判断するのは直属の上長であることがほとんどです。ここが一段目です。
  2. 金額で二段目を付けるかを決める。 概算が一定額を超える場合だけ、部門長や役員の承認を足します。全件に二段目を付けないのが要点です。
  3. 不在時の代理を先に決める。 承認者が出張中・休暇中のときに誰が代わるかを書いておかないと、実際にはここで止まります。
  4. 期限を両側に置く。 「申請は出発の◯日前まで、承認は提出から◯営業日以内」と、申請と承認の両方に期限を決めます。片方だけでは守られません。

申請と実績がずれたときの扱い

予定どおりに終わる出張ばかりではありません。ずれの種類ごとに、どう扱うかを先に決めます。

ずれの種類扱いの決め方
日程が延びた・短くなった実績で精算し、理由を報告に書かせる。再申請は求めない
行き先が増えた規程の区分が変わるなら再申請、変わらないなら報告で足りる
出張が中止になった申請を取り消す手続きを決める。仮払いの返金期限も書く
キャンセル料が出た会社が負担する条件と、精算するときの科目を決めておく
概算を大きく超えた超過の理由を精算時に申告させ、承認者を金額で分ける

ここを決めていないと、ずれるたびに個別の相談になります。相談そのものが手間ですし、判断が人によって変わると規程が形だけのものになります。

税務の側から見た事前申請

出張申請書を作成せよという法令の定めはありません。それでも事前の申請が意味を持つのは、旅費の扱いが「その旅行について通常必要であると認められるか」で決まるからです。目的・行き先・日程が出発前に記録されていれば、業務のための移動であったことを後から説明しやすくなります。会社が支給する旅費のうち非課税とされる範囲の考え方は、国税庁の所得税基本通達9-3(法第9条《非課税所得》関係)に示されています。出典は国税庁の通達目次 https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/01.htm です。

上記の所在は検索結果をもとに記載しており、作成時点で原文のページを直接確認できていません。規程に金額や率を書く前に、必ず原文で確認してください(要確認)。

よくある間違い

  • ひな形の欄をそのまま全部使っている。 自社の規程が使っていない区分の欄が残ると、書く側は迷い、読む側は見ません。規程に無い欄は削ります。
  • 申請の内容を精算で引き継いでいない。 出張先・期間・目的を精算書でもう一度書かせると、提出が遅れ、しかも申請と食い違います。引き継いで、変わった点だけを書かせます。
  • 承認者が役職名だけで決まっている。 「上長」とだけ書き、兼務や不在のときの代理を決めていないと、そこで滞ります。
  • 期限が片側にしかない。 申請の期限だけを決めて承認の期限を決めないと、出発直前の承認が当たり前になります。
  • 例外を口頭で回している。 急な出張、当日の変更、中止。例外ほど記録が要ります。

まとめ

  • 出張申請書に法定の様式はありません。規程で支給額が変わる条件を必須項目にすると、後の精算で確認する作業が減ります。
  • 事前申請を必須にする範囲(宿泊の有無・金額の目安・行き先)と、急な出張の扱いは、同じ節にまとめて書きます。
  • 承認は段数を増やすより、代理と期限を決めるほうが効きます。

まず自社の出張旅費規程を開き、支給額が変わる条件を書き出してください。申請書の必須項目は、その一覧とほぼ同じになります。