旅費交通費はいつの事業年度に計上するか

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出張の旅費は精算した日ではなく債務が確定した事業年度の費用です。期末前に終わった出張を翌期に精算したときの未払計上、前払い、消費税の控除時期を国税庁の出典付きで整理します。

出張の旅費をどの事業年度の費用にするかは、精算書が回ってきた日や、本人の口座に振り込んだ日では決まりません。決まるのは、その事業年度の終わりまでに債務が確定したかどうかです。期末の前に出張が終わっていれば、精算が翌期にずれても当期の費用として未払金等で計上します。逆に、期末の前に航空券の代金を払っていても、出張そのものが翌期なら当期の費用にはならないと読めます。この記事では、国税庁が示す債務確定の3つの要件を出張の形に当てはめ、決算をまたぐときに迷う場面を順に整理します。想定しているのは、決算を控えて未精算の旅費を抱えている中小企業の経理・総務の方です。

分かれ目は精算日ではなく「債務の確定」

国税庁は、償却費以外の費用で事業年度終了の日までに債務が確定しているものとは、別に定めるものを除き、次の要件のすべてに該当するものだとしています(国税庁 タックスアンサー No.5387「販売費、一般管理費その他の費用における債務確定の判定」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5387.htm )。

  1. その事業年度終了の日までにその費用に係る債務が成立していること
  2. その事業年度終了の日までにその債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること
  3. その事業年度終了の日までにその金額を合理的に算定することができるものであること

同じページは、建物等の修繕を発注し、業者によって修繕が完了し、かつ金額の見積りが客観的にできる状況にあれば、この3要件を満たすので未払金等として計上できるという例を挙げています。根拠となる法令等として法人税法第22条と法人税基本通達2-2-12が示されています(前掲 No.5387)。

払ったかどうかは、この3要件のどこにも出てきません。「精算が終わっていないから来期に回す」という処理は、ここからは出てきません。

出張のどの時点で3要件が揃うか

修繕の例を出張に置き換えると、発注が出張命令、完了が出張の終了、金額の見積りが精算の基礎になる運賃や規程の日当に当たります。

期末までに起きたことどの期の費用になるか
出張が終わり、精算は翌期当期。未払金等で計上する(前掲 No.5387 の考え方)
本人が立て替えたまま、精算書がまだ出ていない当期。精算書の有無は3要件に入っていない
航空券や宿泊の代金だけ先に払い、出張は翌期当期の費用にならないと読める。給付をすべき原因となる事実が発生していない
仮払金を渡したが、出張も精算も翌期当期の費用にならない。仮払金は資産のまま残る
期末をまたいで出張している期末までに終わった分と翌期の分に分ける形になると読める

下の2つは、3要件を当てはめるとそう読める、という話です。期末をまたぐ出張をどう分けるか(日数で割るのか、費目ごとに分けるのか)は個別の事情で変わるため、自社の方式で問題がないかは顧問税理士か所轄の税務署に確認してください(要確認)。仕訳の形そのものは旅費交通費の仕訳と出張精算の会計処理にまとめています。出張が中止になったときのキャンセル料も、同じ3要件で期を決めます。

税法が決めているのは「精算の期限」ではない

経費精算の締めを決算日までと案内している解説を見かけますが、国税庁の資料が決めているのは、いつまでに精算するかではなく、どの事業年度の費用になるかです(前掲 No.5387)。社内の締め日は、この帰属を正しく拾うために会社が自分で決める運用の話です。

そのため、締め日を過ぎて出てきた領収書を期限切れとして落とすと、費用の帰属としては当期のものを計上しないことになります。前期に属する旅費が今期になって出てきたときにどう処理するかは、金額の重要性によって実務の扱いが変わるため、顧問税理士に確認してください(要確認)。

経理が手を動かすのは、締め日を早めることではなく、期末前に終わった出張の未精算分を漏らさず拾う手順を置くことです。精算書の欄の作り方は旅費精算書の書き方と差し戻しを減らす欄の決め方にあります。

消費税の控除時期も、払った日では決まらない

消費税の仕入税額控除も同じ向きにずれます。国税庁は、仕入税額の控除は実際に仕入れなどをした課税期間において行うとしています(国税庁 タックスアンサー No.6355「課税売上げと課税仕入れ」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6355.htm )。精算した課税期間でも、お金が動いた課税期間でもありません。

帳簿や請求書等の保存は別の論点です。本人に支給する出張旅費等が帳簿の保存だけで控除できる範囲は出張旅費でインボイスの保存が不要になる範囲、受け取った証憑をデータのまま保存する義務は旅費精算で電子帳簿保存法の対応が要る範囲にまとめています。

個人事業主は12月31日で同じ判定をする

個人事業主の必要経費も同じ考え方です。国税庁は、必要経費となる金額はその年において債務の確定した金額であるとし、その年に支払った場合でもその年に債務の確定していないものはその年の必要経費にならないとしています(国税庁 タックスアンサー No.2210「やさしい必要経費の知識」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2210.htm )。

要件は法人と同じ3つで、基準になる日が12月31日です(前掲 No.2210)。12月の出張を1月に精算しても、その年の必要経費になります。本人の出張で経費にできる範囲は個人事業主の出張日当は経費にできるかにあります。

よくある間違い

  • 精算書が回ってきた日で期を決める。決めるのは債務が確定した日です(前掲 No.5387)
  • 未精算だから翌期に回す。精算の有無は3要件に入っていません(同)
  • 先に払った航空券代を、払った期の費用にする。出張が翌期なら、給付をすべき原因となる事実が発生していないと読めます
  • 締め日を過ぎた領収書を落とす。税法が決めているのは帰属する事業年度で、精算の期限ではありません
  • 消費税の控除も精算した課税期間で取る。実際に仕入れなどをした課税期間です(前掲 No.6355)

まとめ

  • 旅費がどの期の費用かは、債務の成立・給付をすべき原因となる事実の発生・金額の合理的な算定の3要件が期末までに揃ったかで決まります(前掲 No.5387)
  • 期末前に終わった出張は、精算が翌期でも当期に未払金等で計上します。先に払っただけで出張が翌期のものは、逆に当期の費用になりません
  • 期末をまたぐ出張の分け方と、前期分が遅れて出てきたときの処理は個別の事情で変わるため、顧問税理士に確認してください(要確認)

決算前に効くのは、締め日を早めることよりも、期末までに終わった出張で未精算のものが何件残っているかがいつでも分かる状態です。Tabikan は出張の日程と精算の状態を突き合わせ、期末までに終わって未精算のものだけを一覧にします。