旅費精算で電子帳簿保存法の対応が要る範囲

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出張の領収書やICカードの履歴をメールやWebで受け取ると、会社の電子取引としてデータのまま保存する義務が生じます。紙との分かれ目、保存の要件、検索要件が不要になる場合を国税庁の資料で整理します。

紙で受け取った領収書は、これまでどおり紙のまま保存できます。一方、メールやWebサイト、交通系ICカードの履歴のように電子データで受け取ったものは、会社の電子取引として、データのまま保存することが義務です。旅費精算で迷うのは、この受け取り方による分かれ目です。この記事では、どの受け取り方がどちらに当たるのか、データで保存するときの要件、専用のシステムが無い会社でも要件を満たす方法を、国税庁の資料に沿って整理します。想定しているのは、出張の精算で集まる証憑の扱いを決めたい中小企業の経理・総務の方です。

分かれ目は「どうやって受け取ったか」

電子帳簿保存法の電磁的記録による保存は、電子帳簿等保存・スキャナ保存・電子取引の3つに区分されています(国税庁「電子帳簿保存法関係」 https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/index.htm )。旅費精算で関係するのは、後ろの2つです。

このうち電子取引とは、取引情報の授受を電磁的方式により行う取引をいいます。ここでいう取引情報とは、注文書・契約書・送り状・領収書・見積書その他これらに準ずる書類に通常記載される事項です。電子メールで領収書のデータを受け取る取引や、Webサイト上で授受する取引がこれに当たります(国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」問2 https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/03-6.pdf )。

同じ資料の問5は、精算で実際に出てくる受け取り方を並べています。

出張の精算での受け取り方どの区分になるか
メールでPDFの領収書を受け取る電子取引(データのまま保存する義務)
Webサイトから領収書をダウンロードする電子取引
交通系ICカードの支払データをクラウドサービスで取り込む電子取引
クレジットカードの利用明細データを取り込む電子取引
窓口や車内で紙の領収書・切符を受け取る紙のまま保存できる(スキャナ保存は任意)

紙で受け取ったものを画像データにして保存することは、スキャナ保存として任意に選べる方法です。義務になっているのは電子取引のほうだけ、という順で押さえると混乱しません。

従業員の立替払いも会社の電子取引になる

出張の精算では、領収書のデータを受け取るのは本人のスマートフォンやメールです。これも、その行為が会社の行為として行われる場合には、会社としての電子取引に当たります(前掲 問12)。

同じ問12は、集約するまでの一定の間、従業員のパソコンやスマートフォンにデータを置いたままにすることも認められるとしています。ただし条件があり、検索機能を損なうことがないよう、会社としても日付・金額・取引先の検索条件に紐づく形で、そうした保存状況にあることを情報として管理しておく必要があります。税務調査の際に、その従業員が保存するデータを提出できる体制も要ります。

つまり「各自の端末に入れたままでよい」ではありません。「どこに何があるかを会社が日付・金額・取引先で引ける形にしてあるなら、置いたままでもよい」ということです。

保存の要件は、可視性と4つのうち1つの措置

電子取引のデータを保存するときの要件の概要は、次のとおりです(前掲 問18)。

要件中身
見読可能装置の備付け等画面と書面に、整然とした形式で速やかに出せること
検索機能の確保取引年月日その他の日付・取引金額・取引先で探せること
システムの概要を記載した書類自社開発のプログラムを使う場合に限る
次のいずれか1つの措置タイムスタンプが付された後に授受する/速やかにタイムスタンプを付す/訂正削除の記録が残るか訂正削除ができないシステムで授受と保存を行う/正当な理由がない訂正及び削除の防止に関する事務処理規程を策定・運用・備付け

最後の行の4つ目、事務処理規程を作る方法だけは、機器やサービスの費用がかかりません。国税庁は同じ一問一答の問33でこの規程のひな形を示しています。旅費精算のためにシステムを入れる話に進む前に、まずここを埋められるかを見てください。

システムが無くても検索要件は満たせる

専用のシステムが無い場合の満たし方も、一問一答が具体的に挙げています(前掲 問50)。

  • 表計算ソフトで、取引年月日その他の日付・取引金額・取引先を入力した一覧表を作る
  • 税務職員のダウンロードの求めに応じられるようにしておき、ファイル名に日付・金額・取引先を統一した順序で入れる
  • 取引先ごとにフォルダを分け、その中のファイル名に日付と金額を入れる

出張の精算なら、精算1件ごとにファイル名の付け方を決めておくのが現実的です。精算書の欄の決め方は旅費精算書の記事にまとめています。

さらに、判定期間に係る基準期間における売上高が5,000万円以下の事業者は、ダウンロードの求めに応じられるようにしていれば、検索機能の確保の要件がすべて不要になります(前掲 問51)。5,000万円を超えるかどうかは、法人であれば前々事業年度の売上高で判断します。自社がこの線の内側なら、検索の作り込みに時間を使う必要はありません。

間に合わないときの猶予措置

要件に従って保存するためのシステムや社内のワークフローの整備が間に合わない事情がある場合は、税務署長が相当の理由があると認め、かつ税務職員の求めに応じてデータと出力書面の提示・提出ができるようにしているときは、保存時に満たすべき要件にかかわらずデータの保存ができます。この適用を受けるために、税務署への事前の申請は要りません(前掲 問83)。

ここで間違えやすいのは、書面だけを残す方法は認められないという点です。令和5年12月31日までに行う電子取引の宥恕措置では出力書面のみを保存する対応が認められていましたが、令和6年1月1日以後に行う電子取引の猶予措置では、出力書面の提示等に加えて、データそのものも保存しておく必要があります(前掲 問79、問83)。

よくある間違い

  • 金額だけを精算システムに入力して、受け取ったデータを捨てる。 受け取った取引情報を確認して、その取引情報のみを改めて自ら入力することをもって電磁的記録の保存とすることは、認められません(前掲 問36)。受け取ったデータそのものを残してください。
  • 紙の領収書まで電子化しなければならないと思う。 スキャナ保存は任意です。紙のまま保存する運用を続けても、電子取引の義務とは別の話です。
  • 何を証憑として求めるかを規程で決めていない。 何を領収書として出させ、どの形で提出させるかを先に決めておくと、保存の手間はそこで決まります。規程で決める項目は出張旅費規程の記事に、消費税の仕入税額控除で領収書の保存が要らなくなる範囲は出張旅費とインボイスの記事にまとめています。

なお保存期間は、法人の場合、帳簿・書類とも原則7年です。消費税の課税事業者が仕入税額控除の要件として保存すべき請求書等は、これにかかわらず7年間の保存が必要とされています(前掲 問17)。