個人事業主の出張日当は経費にできるか

公開

個人事業主が自分に出す出張日当は必要経費になりません。本人の出張で経費にできる実費の範囲、私用が混ざるときの按分、従業員や家族に日当を出せる条件を国税庁の資料で整理します。

個人事業主が自分に出張日当を支給しても、その日当は必要経費になりません。経費になるのは、その出張で実際に支払った運賃・宿泊料などの実費だけです。日当という定額の支給が税の上で認められているのは、使用者が使用人や役員に払う旅費の枠であって、事業主本人はその枠の外にいます。この記事では、なぜそうなるのかを国税庁の資料で確かめたうえで、本人の出張で経費にできるものの範囲、私用が混ざったときの按分、従業員や家族従業員に日当を出すときの条件を整理します。想定しているのは、従業員を雇っている個人事業の経理・総務の方と、法人化を考えている事業主の方です。

事業主本人への日当は、必要経費にならない

必要経費になるのは、総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用と、その年に生じた販売費・一般管理費その他業務上の費用です(国税庁「No.2210 必要経費の知識」、所得税法第37条。https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2210.htm )。

日当として自分の口座へお金を移しても、それは事業から本人への引き出し(事業主貸)で、そこで新たに業務上の費用が生じたわけではありません。必要経費の定義に当てはまるのは、その出張で実際に支払った運賃・宿泊料・駐車場代などの実費のほうです。

国税庁が「個人事業主本人の日当」を名指しで扱った資料は見つかりませんでした。ただ、次の節のとおり、日当という定額支給が税の上で認められている枠そのものが給与所得者への支給を前提にしているため、本人への支給はその枠に入りません。

日当が非課税になる枠は、給与所得者への支給を前提にしている

給与所得は、使用人や役員に支払う俸給・給料・賃金・賞与などです。各種の手当は原則として給与所得になりますが、例外として、転勤や出張などのための旅費のうち通常必要と認められるものは非課税とされています(国税庁「No.2508 給与所得となるもの」、所得税法第9条。https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2508.htm )。

この非課税の範囲を定めた所得税基本通達9-3 は、対象を、使用者等から旅行をした者に対して旅行に必要な運賃・宿泊料などに充てるものとして支給される金品のうち、その旅行に通常必要とされる費用に充てられると認められる範囲のものとしています(https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/02/02.htm )。

つまりこの枠は、支給する側(使用者)と受け取る側(旅行をした者)が別にいることを前提にしています。事業主本人は自分の使用人でも役員でもないので、ここには当てはまりません。法人の役員や使用人が日当を受け取れるのはこの枠に入るからで、違いは日当の呼び方ではなく、支給する側が別の人格として存在するかどうかです。役員側に重なる線は役員の出張日当はどこまで認められるかに分けて書きました。

本人の出張で経費にできるのは実費。私用が混ざる分は按分する

支出事業主本人の扱い
鉄道・航空・バスの運賃、宿泊料業務のための出張なら実費を旅費交通費に計上
日当(定額の支給)必要経費にならない。事業主貸で処理する
業務と私用の両方に関わる支出按分して業務の分だけ計上
自分ひとりの食事代出張していなくてもかかる支出なので、原則として計上しない

業務と家事の両方に関わる支出(家事関連費)は、取引の記録などに基づいて業務の遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる部分だけが必要経費になります(前掲 No.2210、所得税法第45条、所得税法施行令第96条)。出張に私用の日程をつないだときは、どの日が業務でどの日が私用かを旅程で分け、宿泊料や現地の移動費をその日数で割る形が基本です。按分を支えるのは計算式ではなく、旅程・訪問先・打ち合わせの記録のほうです。

本人の出張では精算書を回す相手がいませんが、何を見て業務と判断したかは残してください。日付・行き先・訪問先・目的を帳簿の摘要か別の記録に書いておくと、按分の説明がその記録で済みます。欄の決め方は旅費精算書の書き方と同じで足ります。

従業員に日当を出すなら、規程と記録を先に作る

個人事業主でも、生計を別にする従業員に出張日当を払うことはできます。その日当は従業員の側では給与の一種で、通常必要と認められる範囲に収まっていれば非課税、はみ出した分は給与として源泉徴収の対象になります(前掲 No.2508、所得税基本通達9-3)。

「通常必要と認められる範囲」を決めるのは税法の金額表ではなく、自社の規程です。国税庁が日当の単価の上限を示した資料はないため、役職と行き先の区分で単価を決め、決めた理由を残す形になります。単価と日数の決め方は出張日当の計算方法と金額の決め方、規程そのものの作り方は出張旅費規程の作り方に分けて書きました。

事業主本人は、この規程の支給対象には入りません。規程には支給対象を従業員と書き、本人の分は実費精算だけにしておくと、帳簿の側で混ざりません。

家族に日当を出す形は、原則として通らない

生計を一にする配偶者やその他の親族に支払う給与は、原則として必要経費になりません。例外は次の2つだけです(国税庁「No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除」、所得税法第56条・第57条。https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2075.htm )。

申告例外の枠要件
青色申告青色事業専従者給与生計を一にする配偶者・親族で、その年の12月31日に15歳以上、その年の6か月を超える期間その事業に専ら従事していること。「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出し、届け出た方法と金額の範囲内で支払う
白色申告事業専従者控除控除額は配偶者は86万円、配偶者以外の専従者は1人50万円と、控除前の事業所得等を専従者の数に1を加えた数で割った額のうち低いほう。専従の要件は青色と同じ

日当は手当であり、受け取る側では給与の一種として扱われます。したがって、生計を一にする家族へ日当を出す形も、この2つの枠の外では必要経費になりません。青色申告なら、届け出た青色事業専従者給与の金額の範囲内で払うのが筋です。給与とは別枠の日当として上積みできるかは国税庁の資料では確かめられなかったので、ここを広げたい場合は税務署か税理士に個別に確認してください。

家族を出張に同行させたときの運賃・宿泊料は、同行が業務上必要だったかで分かれます。業務上必要と言えない同行者の分は、按分して外してください。

よくある間違い

  • 旅費規程を作れば本人にも日当を出せると考える。規程は支給する側が別にいる場合の決まりで、規程の有無で必要経費の定義は変わりません
  • 本人の日当を旅費交通費に計上し、事業主貸にしない。帳簿の上で経費が増えるだけで、根拠は残りません
  • 従業員への日当と実費の精算を1つの支給にまとめ、何に対する支給かを規程で分けない。分けていないと非課税の範囲を説明できません
  • 私用をつないだ出張を全額計上する。計上できるのは、業務の遂行上直接必要と明らかに区分できる部分だけです
  • 家族従業員へ、届け出た青色事業専従者給与の額を超えて日当を足す

まとめ

  • 事業主本人に出す日当は必要経費になりません。経費になるのは実際に支払った運賃・宿泊料などの実費です
  • 日当という定額支給が認められているのは、使用者が旅行をした者に支給する旅費の枠(所得税法第9条、所得税基本通達9-3)です。事業主本人はその枠の外にいます
  • 従業員には日当を出せますが、範囲を決めるのは自社の規程です。生計を一にする家族は、青色事業専従者給与か事業専従者控除の枠で考えてください

Tabikan は規程の支給対象と実費精算の対象を分けて持ち、規程の線からはみ出した精算だけを人に見せます。