出張旅費でインボイスの保存が不要になる範囲

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従業員に支給する出張旅費・宿泊費・日当は、一定の事項を書いた帳簿の保存だけで仕入税額控除ができます。特例が及ぶ範囲、帳簿に書く4項目、規程との関係を整理します。

従業員等に支給する出張旅費・宿泊費・日当のうち通常必要と認められる部分は、インボイス(適格請求書)を保存しなくても、一定の事項を記載した帳簿の保存だけで仕入税額控除ができます。この記事では、その取扱いが及ぶ範囲、帳簿に書く事項、そして「通常必要と認められる」を自社でどう決めるのかを、国税庁の資料に沿って整理します。想定しているのは、精算のたびに領収書の種類で迷っている中小企業の経理・総務の方です。

出張旅費等は帳簿の保存だけで控除できる

事業者が使用人等に支給する出張旅費・宿泊費・日当のうち、その旅行について通常必要であると認められる部分の金額は課税仕入れになります。そして、これらの金額は、一定事項を記載した帳簿のみの保存により仕入税額控除が可能とされています(国税庁 タックスアンサー No.6459「出張旅費、宿泊費、日当、通勤手当などの取扱い」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6459.htm )。

同じ資料では、使用人等に支給する通勤手当のうち通勤のために通常必要とする範囲内のものは、その全額が課税仕入れになるとされています。通勤手当も出張旅費と同じ枠で扱われる、ということです。

帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる場合は、国税庁が一覧の形で示しています。そこには「従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費等(出張旅費、宿泊費、日当および通勤手当)」が挙げられています(国税庁 タックスアンサー No.6496「仕入税額控除をするための帳簿及び請求書等の保存」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6496.htm )。

どの精算がどの枠に入るか

同じ一覧には、出張の精算で出てくるものが別の根拠でも並んでいます。混ぜずに押さえておくと判断が速くなります。

精算の中身帳簿だけでよいか根拠(No.6496 の区分)
本人に支給する出張旅費・宿泊費・日当よい(通常必要と認められる部分)従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費等
通勤手当よい(通常必要とする範囲内)同上
電車・バスの運賃よい(税込3万円未満のとき)税込価額3万円未満の公共交通機関による旅客の運送
特急券など、改札で回収される券よい入場券等が使用の際に回収される取引
自動販売機での購入よい(税込3万円未満のとき)税込価額3万円未満の自動販売機または自動サービス機からの商品の購入等
上記に当たらない宿泊・飲食・物品の購入いいえ一覧に無いため、原則どおりインボイスの保存が要る

1行目と3行目は別の根拠です。公共交通機関の運賃は税込3万円未満という金額の線で決まりますが、本人に支給する出張旅費等は、金額ではなく「通常必要と認められるか」で決まります。どちらの枠で処理しているかを社内で言えるようにしておいてください。

帳簿に書く4項目

帳簿だけで控除するといっても、帳簿には決まった事項を書く必要があります。課税仕入れについて帳簿に記載する事項は次の4つです(国税庁 タックスアンサー No.6497「仕入税額控除のために保存する帳簿及び請求書等の記載事項」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6497.htm )。

記載事項出張の精算で何を書くことになるか
課税仕入れの相手方の氏名または名称誰を相手方として書くかを社内で統一しておく
課税仕入れを行った年月日出張の日。精算日とずれるため、どちらを取るか決めておく
課税仕入れに係る資産または役務の内容宿泊費、日当、鉄道運賃のように、中身が分かる言葉で書く
課税仕入れに係る支払対価の額税率の区分が分かる形で残す

このうち相手方の氏名または名称は、本人へ支給する形だと誰を書くのかが一見して決まりません。この取扱いで処理したことを摘要欄に残すべきかどうかも、案内が分かれるところです。どちらも顧問税理士か所轄の税務署に確認したうえで、書き方を1つに決めてください(要確認)。

「通常必要と認められる」を決めるのは自社の規程

この取扱いの範囲を決めている言葉は、金額ではなく「通常必要であると認められる部分」です。つまり、自社の出張旅費規程が実質的な物差しになります。規程が無い、あるいは金額が実態と合っていない会社ほど、どこまでがこの枠に入るのかを説明しにくくなります。

やることは3つです。日当・宿泊費・交通費の支給の基準を規程で決めること。その基準どおりに支給されたことが精算の記録から読み取れるようにすること。基準を外れた支給(上限を超えた宿泊、役職と違う等級の座席など)を例外として分けて残すことです。規程で何をどの順に決めるかは出張旅費規程の記事に、日当の金額と日数の決め方は日当の計算の記事にまとめています。

精算の様式の側では、1件ごとにどの枠で処理したのかが後から分かる欄を置いておくと、確認の手間が減ります。欄の決め方は旅費精算書の記事で扱っています。

本人に支給していない分は同じ枠に入らない

見落としやすいのが、会社が直接払っている分です。国税庁の一覧が挙げているのは「従業員等に支給する」出張旅費等であり、会社が宿泊先や交通機関へ直接支払ったもの、あるいは会社名義の決済で払ったものは、この言葉の形には当てはまりません。この場合は原則どおり、インボイスの保存が要ると考えるのが自然です。

同じ出張の中に本人立替と会社手配が混ざるため、精算の入口で支払い方を区別しておかないと、後から仕分け直すことになります。なお、会社名義の決済で払った分の具体的な扱いは、国税庁のタックスアンサーでは正面から書かれていないため、自社の決済の形に当てはめた判断は顧問税理士に確認してください(要確認)。

勘定科目と仕訳の組み方そのものは旅費交通費の仕訳の記事で扱っています。

海外出張は前提が違う

海外への出張または転勤のために支給した出張旅費・宿泊費・日当等は、原則として課税仕入れになりません(前掲 No.6459)。課税仕入れにならない以上、インボイスを保存するかどうかという話にもなりません。国内と海外で税区分が逆になるので、精算の様式には国内と海外を分ける欄を置いてください。海外出張で国内と別に決めることは海外出張の旅費規程の記事にまとめています。

よくある間違い

  • 領収書を集めること自体をやめてしまう。ここで不要になるのは消費税の仕入税額控除のためのインボイスの保存です。他の税目で支出の裏付けをどこまで残すかは別の話なので、社内の保存の決まりを変える前に確認してください(要確認)。
  • 公共交通機関の3万円未満と混同する。本人に支給する出張旅費等のほうは金額の線では決まりません。根拠が違うものを1つの社内ルールにまとめると、どちらの条件も満たさない処理が生まれます。
  • 規程を作らないまま特例だけ使う。範囲を決めるのが「通常必要と認められる部分」である以上、基準を書いた規程が無いと範囲を説明できません。
  • 摘要の書き方が人によって違う。帳簿の記載事項は決まっているので、書き方を1つに決めて様式に固定してください。

まとめ

  • 従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費・宿泊費・日当・通勤手当は、一定事項を記載した帳簿の保存だけで仕入税額控除ができます。インボイスの保存は要りません。
  • 範囲を決めるのは金額ではなく「通常必要と認められる部分」なので、実質的な物差しは自社の出張旅費規程です。
  • 会社が直接払った分と海外出張分は、この枠の外です。精算の入口で支払い方と行き先を分けておくと、後の判断が要りません。

まず直近1か月の出張精算を1件開いて、本人立替か会社手配か、国内か海外かが記録から読み取れるかを確かめてください。読み取れなければ、そこが精算の様式に足す欄です。