出張中の食事代は経費になるか
出張の食事代は誰と食べたかで分かれます。本人ひとりは日当、取引先との会食は交際費。二重払いを止める線引きと勘定科目・消費税・規程への落とし方を国税庁の出典付きで整理します。
出張中の食事代を会社の費用にしてよいかは、「誰と食べたか」で分かれます。本人ひとりで食べた食事は出張でなくても摂るものなので、実費で精算せず日当(出張手当)に含めて払うのが基本です。取引先など社外の相手との会食は交際費、社内の会議に伴う弁当は会議費として実費で処理します。この記事では、3つの分かれ方、日当を払っているのに食事代の領収書が出てきたときの扱い、勘定科目と消費税、規程と精算書への落とし方までを順に扱います。想定しているのは、出張の精算を回している中小企業の経理・総務の方です。
出張中の食事代は「誰と食べたか」で分かれる
判定は金額ではなく同席者から入ります。同席者が決まれば科目が決まり、科目が決まれば残すべき記録が決まります。
| 誰と食べたか | 性格 | 科目 | 実費で精算するか |
|---|---|---|---|
| 本人ひとり | 出張に伴う生活費 | 旅費交通費(日当) | しない。日当に含める |
| 社内の役員・従業員だけ | 社内の飲食 | 会議費・福利厚生費・交際費 | 用件により実費 |
| 取引先など社外の相手 | 接待 | 交際費(会議に伴うものは会議費) | 実費 |
「本人ひとりの食事は日当、社外の相手との食事は実費」と決めておけば、現場の問い合わせは片付きます。迷うのは社内だけの飲食で、税の扱いが社外の場合と違います。
本人ひとりの食事代は、日当で払う
本人ひとりの食事を会社が実費で払うと、本来その人が負担する生活費を会社が持ったことになり、給与として課税される余地が出ます。
所得税では、役員や使用人に支給する手当は原則として給与所得になりますが、「転勤や出張などのための旅費のうち、通常必要と認められるもの」は非課税とされています(国税庁 タックスアンサー No.2508「給与所得となるもの」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2508.htm )。出張中の食事や身支度にかかる細かい出費は、この旅費の枠で日当として定額で払い、領収書を集めないのが実務の形です。
日当の単価の決め方と日数の数え方は出張日当の計算方法と金額の決め方、規程に落とす順番は出張旅費規程の作り方と決める7項目にまとめています。
日当を払っているのに食事代の領収書が出てきたら
実務でいちばん止まるのがここです。日当を払っているのに食事の領収書が出てくる。これを通すと、同じ食事代を日当と実費で二重に払うことになります。
線はひとつです。日当の対象に含めたものは、実費で精算しない。 規程で日当が何をまとめた支給なのかを書いておき、精算書の欄をその線に合わせます。
- 規程の条文か別表に、日当が食事代・飲料代・諸雑費をまとめた定額であることを1行書く
- 精算書に「食事代」の欄を作らない。実費の飲食の欄は「交際費(同席者・用件・人数を書く欄つき)」だけにする
- 例外を認めるなら、認める場合・上限・承認者を規程に書いて、例外として処理する
二重払いは、規程の文言よりも精算書の欄の設計で止まります。欄があれば人は埋めるので、置かないことがいちばん効きます。
取引先との会食は交際費。社内だけの飲食は1人1万円の線に乗らない
交際費等とは「法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者などに対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するもの」です(国税庁 タックスアンサー No.5265「交際費等の範囲と損金不算入額の計算」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5265.htm )。
飲食等に要する費用は、支出額を参加者の数で割った金額が10,000円以下であれば交際費等から除かれます(令和6年3月31日以前の支出は5,000円以下でした。前掲 No.5265)。ただし、この除外には条件が2つ付きます。
- 帳簿書類に、飲食等のあった年月日、参加した得意先・仕入先その他事業に関係のある者等の氏名または名称およびその関係、参加した者の数、費用の額と飲食店等の名称・所在地を残すこと(前掲 No.5265)
- 社内飲食費は対象外。 専らその法人の役員もしくは従業員またはこれらの親族に対する接待等のために支出するものは、1人当たりの金額が10,000円以下でも除外されません(前掲 No.5265)
取引先と1人8,000円の食事なら記録を残して外せますが、社内の同僚だけで同じ食事をしても外せません。社内だけの飲食は、会議に関連して茶菓、弁当その他これらに類する飲食物を供与するために通常要する費用であれば交際費等から除かれるので(前掲 No.5265)、会議の用件があったかどうかで会議費にできるかを判定します。
会社が食事そのものを出したとき
弁当を配る、食事代として現金を渡す。この形は旅費ではなく「食事の支給」の扱いになります。
役員や使用人に支給した食事が非課税になるのは、次の2つをどちらも満たすときです(国税庁 タックスアンサー No.2594「食事を支給したとき」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2594.htm )。
- 役員や使用人が食事の価額の半分以上を負担していること
- 会社の負担額が1か月当たり7,500円(消費税および地方消費税の額を除く)以下であること
どちらかを満たさなければ、会社が負担した差額が給与として課税されます。また現金で食事手当を支給する場合は原則として全額が給与課税になり、例外は深夜勤務者に支給する1食当たり650円以下の夜食代などに限られます(前掲 No.2594)。出張の食事代を日当とは別に現金で渡す運用はここに当たる可能性があるため、日当に寄せるほうが整理がつきます。
消費税の扱い
国内の出張または転勤のために役員または使用人に支給した出張旅費・宿泊費・日当等は、その旅行について通常必要であると認められる部分の金額が課税仕入れになり、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除ができます(国税庁 タックスアンサー No.6459「出張旅費、宿泊費、日当、通勤手当などの取扱い」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6459.htm )。日当に含めた食事代は、この枠で処理できます。
一方、交際費や会議費として実費で精算した飲食は旅費ではないので、この特例には乗りません。原則どおり適格請求書(インボイス)の保存が要ります。詳しくは出張旅費でインボイスの保存が不要になる範囲にまとめています。
規程と精算書に落とす
決めることは3つです。
| 決めること | 書く場所 |
|---|---|
| 日当が何をまとめた定額か(食事代を含むか) | 出張旅費規程の日当の条文・別表 |
| 実費で精算してよい飲食は何か(社外の同席者がいるもの) | 同じ規程の交際費の条文、または交際費の規程 |
| 同席者・用件・人数をどこに書かせるか | 精算書の交際費の欄 |
3つ目を欠くと No.5265 の記録が残らず、1人当たり10,000円以下でも交際費等から外せません。
よくある間違い
- 日当を払いながら食事の領収書も実費で精算する(二重払い。規程と精算書の欄で止める)
- 社内だけの飲食を、1人当たり10,000円以下だからと交際費等から外す(社内飲食費は対象外。前掲 No.5265)
- 出張の食事代を日当とは別に現金で渡す(原則として給与課税。前掲 No.2594)
- 海外出張の食事代を No.6459 の枠で処理する(国内の出張・転勤に限られる)
まとめ
- 出張中の食事代は同席者で分かれます。本人ひとりなら日当、社外の相手との会食なら交際費、会議に伴う弁当なら会議費です。
- 日当と実費の二重払いは、精算書に「食事代」の欄を置かないことで止まります。
- 1人当たり10,000円以下で交際費等から外す扱いは記録を残すのが条件で、社内飲食費には使えません(前掲 No.5265)。
次にやることは1つです。自社の出張旅費規程を開いて、日当の条文に食事代を含むと書いてあるかを確かめてください。書いていなければ、そこから直します。Tabikan は規程に書いた内容をそのまま精算の判定に使います。