単身赴任の帰省旅費は非課税になるのか

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単身赴任者に出す帰省の旅費は、職務上の旅行に付随する帰宅かどうかで所得税の扱いが分かれ、消費税では課税仕入れになりません。国税庁の資料で2つの軸を整理します。

単身赴任者の帰省の旅費を会社が出すとき、「旅費だから非課税」とはなりません。所得税で非課税になるのは職務上の旅行に付随して帰宅する場合の旅費に限られ、帰宅そのものを目的とした支給は、名目が旅費でも給与として扱われます。そのうえで消費税では、この帰宅旅費は課税仕入れになりません。1つの支給に対して所得税と消費税が別々の答えを出すため、科目だけで決めると申告がずれます。この記事は、その2つの軸と、規程・精算の様式にどう落とすかを、中小企業の経理・総務の方に向けて整理します。

分かれ道は「職務上の旅行に付随する帰宅か」

国税庁の質疑応答事例(源泉所得税)は、単身赴任者が帰宅のために支給を受ける旅費の取扱いを示しています。関係法令通達として挙げられているのは、所得税法第9条第1項第4号、所得税基本通達9-3、昭和60年11月8日直法6-7です(国税庁 質疑応答事例(源泉所得税) https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/gensen/03/24.htm )。

非課税の対象になるのは、職務上の旅行に付随して帰宅する部分であって、かつ所得税基本通達9-3の定める通常必要と認められる旅費の範囲に収まるものです。会議や用務のために本社へ出張し、その前後に留守宅へ寄る形がこれに当たります。

逆に、用務が無く、帰宅することそのものを目的として支給するものは、ここに入りません。毎月定額で出す単身赴任手当も、年に何回までと決めて実費を精算する形も、職務上の旅行に付随していなければ給与として課税されます。非課税となる範囲は帰宅の期間や地域によっても変わり、個別の事情で結論が動くため、頻度や金額の大きいものは所轄の税務署か顧問税理士に確認してください。

所得税と消費税は別々に判定する

同じ1つの支給について、2つの税を別に見ます。

支給の形所得税消費税
職務上の旅行に付随して帰宅する部分の旅費通常必要と認められる範囲は非課税国内の出張旅費等として通常必要と認められる部分は課税仕入れ
帰宅そのものを目的として出す旅費給与として課税課税仕入れにならない
毎月定額で出す単身赴任手当給与として課税課税仕入れにならない

国内の出張または転勤のために役員または使用人に支給した出張旅費・宿泊費・日当等のうち、その旅行について通常必要と認められる部分の金額は課税仕入れになります(国税庁 タックスアンサー No.6459「出張旅費、宿泊費、日当、通勤手当などの取扱い」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6459.htm )。付随して帰宅した分は、この出張旅費の一部として処理されます。

消費税では課税仕入れにならない

国税庁の質疑応答事例(消費税)は、単身赴任者を支援するために支給する単身赴任手当と、帰宅のための旅費のいずれについても、仕入税額控除の対象にならないとしています。単身赴任手当は給与の性格を持つため、帰宅旅費は業務上必要な旅費とは認められず給与と同様の性格を持つと考えられるため、という理由です。関係法令通達は消費税法第2条第1項第12号と消費税法基本通達11-6-4です(国税庁 質疑応答事例(消費税) https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shohi/16/05.htm )。

実務で効くのはここです。帰宅旅費を旅費交通費の科目で処理していても、その分を課税仕入れに入れることはできません。「旅費交通費だから課税仕入れ」と科目で判定している会社は、ここでずれます。科目ではなく、何に対する支給かで決まります。

所得税と消費税の判定が別だという例は、通勤手当にも出ます。通勤手当は、通勤のために通常必要と認められる範囲のものであれば、所得税で非課税となる限度額を超えていても、その全額が課税仕入れになります(前出 No.6459)。所得税の非課税の線と、消費税の課税仕入れの線は、別の場所にあります。

規程と様式に決めておく4つ

  1. 名目を分ける — 「職務上の旅行に付随する帰宅」と「帰省の補助」を、規程で別の条として書く。同じ「帰省旅費」の名で混ぜない
  2. 区別できる申請欄を置く — 用務の有無・用務先・日程を書かせる。付随する帰宅かどうかは、この記録でしか示せない
  3. 税区分を様式で決める — 帰省の補助として出す分は給与として処理し、課税仕入れに入れない。様式の側で科目と税区分が決まる形にする
  4. 源泉徴収の手当てを決める — 給与として課税する分は、支給月の給与に含めて源泉徴収する。旅費の精算としてだけ処理すると漏れる

規程全体の組み立ては出張旅費規程の作り方に、赴任そのものの旅費は転勤・赴任の旅費を規程でどう決めるかにあります。申請・精算の欄の作り方は旅費精算書の書き方、税区分を含む仕訳は旅費交通費の仕訳と出張精算の会計処理で扱っています。

よくある間違い

  • 「旅費」という名目だけで非課税と判断する。非課税になるのは職務上の旅行に付随する帰宅の部分で、通常必要と認められる範囲に限られます
  • 用務のある出張に付随した帰宅まで、まとめて給与として課税する。付随する部分は出張旅費として扱える範囲です
  • 帰宅旅費を旅費交通費で処理し、そのまま課税仕入れに入れる。質疑応答事例は対象にならないとしています
  • 毎月定額の単身赴任手当を、旅費の実費精算と同じ扱いにする。定額の手当は給与です
  • 同一地への長期出張で一時帰宅した場合と同じものとして扱う。出張として続いている間の扱いは長期出張の日当は減額してよいのかで扱っています
  • 用務の記録を残さずに非課税で処理する。付随していたことを示せるのは、用務先と日程の記録だけです

まとめ

  • 所得税で非課税になるのは、職務上の旅行に付随して帰宅する部分のうち、通常必要と認められる範囲の旅費です
  • 帰宅そのものを目的とする旅費と、毎月定額の単身赴任手当は、所得税では給与として課税され、消費税では課税仕入れになりません
  • 1つの支給に2つの答えが出るので、規程で名目を分け、申請の様式で用務の有無が残る形にしておきます

最初に決めるのは金額ではなく、どちらの名目で出すかです。Tabikan は規程に書いた支給の条件を設定として持ち、用務の記録と結び付かない精算だけを人に見せます。