長期出張の日当は減額してよいのか

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同一地への長期出張で日当を減らしてよいかは、法令の日数ではなく自社の規程で決まります。所得税基本通達9-3が挙げる勘案事項から、線の引き方と長期化で変わる経理の扱いを整理します。

同一地への長期出張で日当を減額することはできます。何日目から減らすかを定めた法令はなく、物差しになるのは所得税基本通達9-3 の「通常必要とされる費用」で、9-3 は判定の場面として旅行の期間の長短を挙げています。決めるのは自社の旅費規程です。この記事では、減額してよい根拠、線の引き方、長期化で経理の側が変わる3つのこと(宿泊の払い方、一時帰宅、赴任との境目)を整理します。想定しているのは、同一の現場や取引先へ社員を1か月以上送る中小企業の経理・総務の方です。

減額してよい根拠は、通達が期間の長短を判定の場面に挙げていること

給与所得者が受け取る手当は原則として給与所得になりますが、例外として、転勤や出張などのための旅費のうち通常必要と認められるものは非課税とされています(国税庁「No.2508 給与所得となるもの」、所得税法第9条第1項第4号。https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2508.htm )。

この非課税の範囲を定めた所得税基本通達9-3 は、対象を、その旅行について通常必要とされる費用の支出に充てられると認められる範囲内の金品としています。そして、その範囲内かどうかを、旅行の目的・目的地・行路や期間の長短・宿泊の要否・旅行者の職務内容や地位等からみて判定するとしています(https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/02/02.htm )。

期間の長短がここに並んでいるので、滞在が長い出張の単価を下げる規定は、通達の物差しから外れた扱いではありません。

「何日から」を決める法令は無い。線を引くのは規程

9-3 は、通常必要とされる費用の範囲内かどうかの判定に当たって勘案するものとして、次の2つを挙げています(前掲 9-3)。

通達が勘案するもの規程の側に求められること
支給額が、使用者等の役員および使用人の全てを通じて適正なバランスが保たれている基準によって計算されたものであるかどうか長期の減額を、特定の人や特定の案件ではなく、全員に同じ基準で当てる
支給額が、同業種・同規模の他の使用者等が一般に支給している金額に照らして相当と認められるものであるかどうか単価と減額後の額が、同業・同規模の水準から離れていないことを確かめ、確かめた記録を残す

国税庁は、長期出張とする日数の線も、減額の率も示していません。民間の解説には「何日以上で何割」という目安が出回っていますが、出所を書ける数字ではないため、この記事では相場として挙げません。自社で決めるのは次の5つです。

決めること中身
長期出張の定義同一地に引き続き何日滞在したら長期として扱うか
同一地の範囲市区町村か、都道府県か、現場単位か
起算と通算初日から数えるか、線を超えた日から数えるか。いったん帰社したら通算を切るか
減額の段単価を何段に分けるか。段ごとの額
適用除外研修・応援・災害対応など、減らさない事由

決めた理由も一緒に残してください。9-3 が見るのは金額そのものではなく、その金額が出てきた基準の立て方です。規程そのものの作り方は出張旅費規程の作り方と決める7項目にあり、長期出張はその記事で例外の扱いとして挙げた項目のひとつです。

単価を下げる理由は、長期化で実費との差が開くこと

日当は、出張中の食事代や雑費に充てる定額の支給です(単価と日数の決め方は出張日当の計算方法と金額の決め方)。滞在が長くなると1日あたりの出費は落ち着く傾向があり、短期と同じ単価を払い続けると実費との差が開きます。

差が開いた状態は、通常必要とされる費用に充てられる範囲から離れていく方向です。ただし「長期だから課税される」という線は、法令にも通達にも示されていません。見られるのは期間そのものではなく、その期間に対して金額が相当かどうかです。日当に社会保険料がかかるかどうかの線は出張の日当に社会保険料はかかるのかに分けて書きました。

宿泊を会社の借上げに切り替えると、保存する書類の側が変わる

長期になると、ホテルから月単位で借りる住居へ切り替える運用があります。ここで変わるのは宿泊費の額だけではありません。本人に宿泊費を支給して精算させる形から、会社が貸主へ直接払う形に移ると、消費税の扱いが別の枠に寄ります。本人への支給なら帳簿の保存だけで仕入税額控除ができる特例の範囲ですが、会社が直接払う形は、宿泊先の適格請求書を保存する側に寄ります(出張の宿泊費は実費精算か定額支給か、出張旅費でインボイスの保存が不要になる範囲)。

規程には、切り替える条件、切り替えたあとは宿泊費を支給しないこと、光熱費や共益費をどちらが負担するかまで書いてください。日当だけが残る形になるので、何に対する支給が残っているのかを書き分けてください。

一時帰宅を定額の手当にすると、旅費から外れる

長期出張では、途中で帰社・帰宅させる費用が出てきます。これを出張1件ごとの旅費として実費で精算するか、毎月の手当にするかで扱いが分かれます。

国税庁の質疑応答事例は、単身赴任者に月または年単位で支給する帰宅のための旅費について、職務の遂行に必要な旅行の費用とは認められず、給与に当たるものと考えられるため、課税仕入れに該当しないとしています(「単身赴任手当」、消費税法第2条第1項第12号、消費税法基本通達11-6-4。https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shohi/16/05.htm )。

これは赴任した人への手当を扱った事例で、長期出張者の一時帰宅を名指しした資料ではありません。ただし、定額・定期の支給にすると旅費の性格から離れるという向きは同じです。一時帰宅は、帰社の指示を出した1件ごとに実費で精算する形にしておくと、旅費交通費のまま扱えます。手当の形にするなら、給与として処理する前提で設計してください。

赴任になったら、旅費の種類が変わる

長期出張のまま延ばし続けると、実態が赴任に近づきます。生活の本拠を移して赴任したのであれば、支給する理由は出張旅費ではなく転勤に伴う旅費になり、非課税の枠も別の条文で考えることになります(転勤・赴任の旅費を規程でどう決めるか)。

規程には、長期出張として扱う期間の上限と、上限に達したときに誰が赴任への切り替えを判断するかを書いてください。上限を置かないと、出張のまま年単位で延び、日当と宿泊費を払い続ける形が残ります。線引きは個別の事情によるので、年単位の滞在が見えてきた時点で税理士に確かめてください。

よくある間違い

  • 他社の「何日以上で何割」をそのまま自社の規程に写す。9-3 が見るのは自社の基準の整合性と、同業種・同規模との相当性です
  • 減額の規定を作らず、運用だけで減らす。全員に同じ基準で当たっていることを示せません
  • 宿泊を会社の直接払いに切り替えたのに、本人への支給と同じ帳簿のみの保存を続ける
  • 一時帰宅を毎月定額の手当にして、旅費交通費に計上する
  • 期間の上限を決めず、赴任への切り替えを判断しないまま延長を重ねる
  • 日当を減らす代わりに、実費の追加精算を無制限に認める。規程の外で判断する運用に戻ります

まとめ

  • 長期出張の日当は減額できます。所得税基本通達9-3 が旅行の期間の長短を判定の場面に挙げているためで、何日目からという線は法令にありません
  • 線を引くのは自社の規程です。9-3 が挙げる2つの勘案事項(全役員・使用人を通じた適正なバランスと、同業種・同規模との相当性)を満たす形で、定義・起算・段・除外を決め、決めた理由を残してください
  • 長期化で変わるのは日当の額だけではありません。宿泊の払い方は保存する書類を変え、一時帰宅は定額にすると旅費から外れ、赴任に至れば旅費の種類が変わります

Tabikan は規程の段ごとの単価を持ち、滞在日数が段をまたいだ精算だけを人に見せます。