出張の交通費は定期区間を差し引いて精算する

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通勤定期と重なる区間の運賃は出張の精算から差し引くのが基本です。基準になる区間、一部だけ重なるときの計算、自費の定期の扱い、規程の文言と経理の確認手順を国税庁の資料で整理します。

出張や外出の交通費のうち、会社に申請している通勤定期の区間と重なる部分は、精算から差し引くのが基本です。会社はその区間の運賃を通勤手当として先に負担しているため、同じ区間を出張旅費でもう一度支給すると、ひとつの移動に二度払うことになります。この記事では、差し引く基準になる区間はどれか、一部だけ重なるときにいくら差し引くのか、自費で定期を買っている人や定期を持たない人はどう扱うのかを、国税庁の資料と規程の書き方に分けて整理します。想定しているのは、精算書に出てきた経路を見て「この区間は定期で乗れたのでは」と迷う中小企業の経理・総務の方です。

差し引く基準は「会社に申請した通勤定期の区間」

基準になるのは、本人が実際に持っている定期券ではなく、会社に申請して通勤手当を受けている区間です。会社が負担していない区間を差し引くと、その分が本人の自己負担になってしまいます。

本人の定期の持ち方出張の経路が重なったとき考え方
会社に申請し、通勤手当として定期代を受けている重なる区間の運賃を差し引く会社がその区間の運賃をすでに負担している
会社に申請していない別経路の定期を自費で買っている差し引かない会社はその区間を負担していない
定期を買っておらず、通勤手当も受けていない差し引かない同じ区間への支給が二重になっていない
出勤した日だけ通勤の実費を受けているその日に通勤の運賃を受けたかで決める二重になるのは実費を受けた日だけ

在宅勤務が中心で、出勤した日の運賃だけを実費で払う形にしている会社では、定期券という単位が無くなります。この場合に見るのは区間ではなく日付です。同じ日に通勤の運賃と出張の運賃の両方を払っていないかを確かめます。

通勤手当と出張旅費は、別の枠で非課税になっている

税務の側から見ると、この2つは別の規定で非課税とされています。

電車・バス通勤者の通勤手当は、最も経済的かつ合理的な経路および方法で通勤した場合の通勤定期券などの金額が非課税で、1か月当たりの金額が15万円を超える場合は15万円が限度になります。その経路・方法に当たるなら新幹線や特急の料金も含みますが、グリーン料金は含みません(国税庁 タックスアンサー No.2582「電車・バス通勤者の通勤手当」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2582.htm )。

出張旅費の側は、旅行に必要な運賃・宿泊料・移転料等の支出に充てるものとして支給される金品のうち、旅行の目的、目的地、行路や期間の長短、宿泊の要否、旅行者の職務内容および地位等からみて、その旅行に通常必要とされる費用の支出に充てられると認められる範囲内のものが非課税です。範囲内かどうかの判定では、支給額が役員・使用人のすべてを通じて適正なバランスが保たれている基準で計算されたものか、同業種・同規模の他の使用者が一般的に支給している金額に照らして相当と認められるかを勘案するとされています(国税庁 所得税基本通達9-3「非課税とされる旅費の範囲」 https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/02/02.htm )。

通勤手当として定期代を受けている区間は、本人にその日あらためて運賃の支出が生じていません。支出に充てるものという前提が立たない分を上乗せすれば、「通常必要とされる費用の支出に充てられる」範囲という説明が立ちにくくなります。ただし、定期区間の重複をそのまま名指しした一次情報は、国税庁の資料では確認できていません(要確認)。自社の処理を決める前に、顧問税理士か所轄の税務署に確認してください。

一部だけ重なるときは、定期区間の外側の運賃で計算する

重なり方は4つに分かれます。精算する額は、実際に乗った全区間の運賃から定期区間の運賃を引くのではなく、定期区間の端の駅から目的地までを買ったときの運賃で決めます。

経路の形精算する額
出発駅も到着駅も定期区間の内側0円
定期区間の途中駅から、その外へ出た定期区間の端の駅から目的地までの運賃
定期区間を通り抜けて、さらに先へ行った定期区間の端の駅から目的地までの運賃
定期区間とまったく別の路線で移動した実際に乗った区間の運賃(差し引かない)

ここが実務でずれる原因になります。鉄道の運賃は距離に比例しないため、通し運賃から定期区間の運賃を引いた額と、端の駅から目的地までの運賃は一致しません。多くの場合、引き算のほうが小さく出ます。どちらで計算するかを決めていないと、同じ経路でも担当者ごとに精算額が変わります。規程に計算方法のほうを書いてください。

規程に書く5行

決めること書き方の例
差し引く対象会社に申請した通勤定期の区間と重なる区間の運賃は支給しない
計算の方法定期区間の端の駅から目的地までの運賃で計算する
自費の定期会社に申請していない定期券の区間は差し引かない
別経路を使ったとき最も経済的かつ合理的な経路および方法による運賃を上限とする
申請の様式精算書に通勤定期の区間(発駅・着駅・経路)を記入する欄を設ける

「最も経済的かつ合理的な経路および方法」は、国税庁が通勤手当の非課税限度額の判定で使っている言い方です。社内の基準にもこの言葉を借りておくと、通勤手当と出張旅費で判断の軸がそろいます。

規程そのものの組み立ては出張旅費規程の作り方と決める7項目、精算書に置く欄の決め方は旅費精算書の書き方と差し戻しを減らす欄の決め方にまとめました。

経理が見る5つの点

  1. 通勤定期の区間(発駅・着駅・経路)を、通勤手当の申請書から拾う。精算書に本人が書いた区間だけで突き合わせない
  2. 精算書の経路と重ねて、重なる区間を特定する
  3. 重なる区間があれば、定期区間の外側だけの運賃に直す
  4. 定期の有効期限を見る。失効している期間や、購入前の日は差し引かない
  5. 通勤経路が変わった月は、変更前後のどちらの区間で判定するかを先に決める

4と5は漏れやすい点です。通勤定期は申請したときの区間のまま台帳に残り、本人が引っ越しても経理に伝わるのは翌月以降になりがちです。日当の対象にする区間との線引きは出張日当の計算方法と金額の決め方でも触れています。

よくある間違い

  • 本人が申告した経路をそのまま承認し、通勤定期の区間と突き合わせない。止める場所は承認ではなく様式です
  • 通し運賃から定期区間の運賃を引いて計算する。運賃は距離に比例しないため、端の駅から買った運賃と額が合いません
  • 自費で買った定期の区間まで差し引く。会社が負担していない区間なので、本人の自己負担になります
  • 定期が失効している期間も、台帳の区間だけを見て差し引く

まとめ

  • 差し引く基準は、本人が持っている定期券ではなく、会社に申請して通勤手当を受けている区間です
  • 計算は「定期区間の端の駅から目的地まで」の運賃で決めます。通し運賃からの引き算とは額が変わるため、どちらで計算するかを規程に書いてください
  • 通勤手当と出張旅費は別の規定で非課税とされています。同じ区間を両方で払う形になっていないかを、月次で確かめてください

Tabikan は申請された経路と通勤定期の区間を重ね、重なる区間が残っている精算だけを人に見せます。