出張のレンタカー代を経費にする条件と勘定科目
出張で借りたレンタカー代は旅費交通費で処理するのが基本です。公共交通機関特例が使えない理由、本人の立替えと会社の直接払いで変わる保存書類、ガソリン代や高速代の扱いを国税庁の資料で整理します。
出張先で借りたレンタカー代は、業務のための移動であれば経費になりますが、電車やバスと同じ処理にはなりません。レンタカーは旅客の運送ではなく車そのものの貸渡しなので、消費税の仕入税額控除で使える公共交通機関特例の対象から外れます。この記事では、保存する書類が払い方でどう変わるか、勘定科目をどう決めるか、ガソリン代や高速道路料金といった付随費用をどう扱うかを、国税庁の資料で整理します。想定しているのは、出張精算書に貼られたレンタカーの領収書をどう処理するか迷っている中小企業の経理・総務の方です。
レンタカー代は公共交通機関特例の対象にならない
適格請求書の交付義務が免除される3万円未満の公共交通機関による旅客の運送については、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます。ここで挙げられている公共交通機関は船舶・バス・鉄道の3つです(国税庁 インボイス制度に関するQ&A 問105「公共交通機関による旅客の運送」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/105.pdf 、消法30⑦、消令49①一イ)。
レンタカーは、運送を受けるのではなく車を借りて自分で運転する取引です。船舶・バス・鉄道のいずれにも当たらないため、支払った額がいくらであってもこの特例は使えません。鉄道のような「3万円未満なら帳簿だけ」という線がそもそも無く、原則として適格請求書(インボイス)の保存が仕入税額控除の要件になります。
帳簿だけでよい枠に入るかは「誰に支払ったか」で分かれる
帳簿のみの保存が認められる枠は、もう1つあります。社員に支給する出張旅費、宿泊費、日当等のうち、その旅行に通常必要であると認められる部分の金額は、課税仕入れに係る支払対価の額に該当するものとして取り扱われ、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます(国税庁 インボイス制度に関するQ&A 問107「出張旅費、宿泊費、日当等」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/107.pdf 、消法30⑦、消令49①一ニ、消規15の4二)。使用人等に支給した出張旅費等のうち通常必要であると認められる部分が課税仕入れになることは、タックスアンサーにも置かれています(国税庁 No.6459「出張旅費、宿泊費、日当、通勤手当などの取扱い」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6459.htm )。
この枠は「社員に支給する」ものに限られます。つまり、同じレンタカー代でも払い方で分かれます。
| 払い方 | 保存するもの | 根拠になる枠 |
|---|---|---|
| 本人が立替え、出張旅費として精算する | 帳簿(通常必要と認められる部分) | 従業員等に支給する出張旅費等 |
| 会社が法人カードや直接契約でレンタカー会社に払う | 適格請求書 | どの免除にも当たらない |
ただし、レンタカー代がこの「出張旅費、宿泊費、日当等」に含まれるかは、国税庁の資料で名指しされていません。社内の処理を1つに決める前に、顧問税理士か所轄の税務署に確認してください(要確認)。確認が済むまでは、インボイスの保存を求める運用にしておくほうが、後から戻す手間がかかりません。レンタカー会社から受け取る領収書に登録番号が入っていれば、この論点自体が起きません。
帳簿のみで控除するときに帳簿へ書く事項は、出張旅費でインボイスの保存が不要になる範囲で整理しています。
勘定科目は旅費交通費が基本。使い分けの線を1つ決める
勘定科目の名前は法令で決まっているものではありません。出張の移動手段として借りたレンタカー代は、旅費交通費で処理するのが基本です。一方、営業車の代車として借りている、現場へ資材を運ぶために借りているといった出張と結びつかない利用は、車両費や賃借料で管理する会社もあります。
どちらが正しいかよりも、同じ場面では同じ科目が使われることのほうが大事です。出張精算から上がってきたものは旅費交通費、それ以外は車両費、のように線を1つ決めて経理の手順書に書いておきます。仕訳の形は旅費交通費の仕訳と出張精算の会計処理にまとめました。
付いてくる費用は、費目ごとに決めておく
レンタカーの精算で揉めるのは、基本料金ではなく周りに付いてくる費用です。
| 費目 | 考え方 |
|---|---|
| 基本料金・免責補償料 | 業務のための利用なら旅費交通費。契約に含めて借りるものなので同じ扱いにすると分かりやすい |
| ガソリン代(満タン返し) | 本人が給油して立て替えるため領収書が別に出る。レンタカー代と結びつけて精算書に載せる |
| ETC・高速道路料金 | 利用証明書で金額が分かる。どの出張の分かを精算書で結びつける |
| 駐車場代 | 公共交通機関特例の対象外。領収書で処理する |
| 事故時の修理費・休車補償 | 本人負担か会社負担かを、起きる前に規程で決めておく |
| 乗り捨て料金 | 行程の都合で必要なら業務の費用、本人の都合なら本人負担 |
これらが出張旅費等の枠に入るかどうかも資料に名指しされていないため、インボイスを集めておけば、どちらに転んでも控除は崩れません。電子で受け取った利用証明書や領収書の保存は旅費精算と電子帳簿保存法の対応にあります。
自家用車で行く場合とは精算の形が変わる
自家用車で出張したときは、その出張で使ったガソリンの実費が分からないため、距離単価で払う方式がよく使われます(出張のガソリン代の精算方法と規程の決め方)。レンタカーは請求書で実費が確定するので、距離単価を使う理由がありません。両方を認めている会社では、本人がその場で有利なほうを選べてしまわないように、どちらを使うかの順序を規程で決めておきます。
給与課税の線は「通常必要と認められる範囲」
非課税とされる旅費は、その旅行の目的、目的地、行路若しくは期間の長短、宿泊の要否、旅行者の職務内容及び地位等からみて、その旅行に通常必要とされる費用の支出に充てられると認められる範囲内の金品とされています(国税庁 所得税基本通達9-3「非課税とされる旅費の範囲」 https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/02/02.htm )。帳簿のみの保存が認められる「その旅行に通常必要であると認められる部分」も、この通達に基づいて判定するとされています(前出のQ&A 問107)。
業務に必要な範囲を超えた分は、この範囲から外れる余地があります。現地での私用の外出に使った区間や、業務の終わった後に延泊して乗り続けた分がこれに当たります。業務と私用が混ざる利用は、走行距離や日数のように後から説明できる基準で分け、私用分は本人負担にしておきます。
よくある間違い
- 鉄道代と同じつもりで、3万円未満だから領収書なしで処理する。公共交通機関特例に入るのは船舶・バス・鉄道だけです
- 法人カードでレンタカー会社に直接払った分を、本人に支給する出張旅費の枠で帳簿だけにする。本人への支給ではないため、この枠には入りません
- ガソリン代・高速道路料金・駐車場代を精算書の「レンタカー代」に合算し、どの領収書に対応する金額か分からなくする
まとめ
- レンタカー代は公共交通機関特例の対象外です。原則として適格請求書の保存が要ります
- 本人が立て替えて出張旅費として精算する分と、会社が直接払う分とでは保存する書類が変わります。レンタカー代が出張旅費等の枠に入るかは名指しされていないため、確認が済むまではインボイスを集めてください
- 付随費用は費目ごとに本人負担か会社負担かを先に決めておくと、精算の差し戻しが減ります
規程そのものの組み立ては出張旅費規程の作り方にあります。Tabikan は規程に書いた線を設定として持ち、そこから外れた精算だけを人に見せます。