出張のグリーン車代は経費にできるか
出張でグリーン車に乗った特別車両料金を精算できるかは、社内の旅費規程と、税務で「通常必要と認められる範囲」かの二段で決まります。規程の書き方と満席時の差額の扱いを整理します。
出張で新幹線のグリーン車に乗ったとき、その特別車両料金を会社の経費として精算できるのか。決まるのは二段です。社内で払えるかは自社の旅費規程が決め、税務で給与として課税されないかは所得税法が決めます。所得税法第9条第1項は、同項に掲げる所得については所得税を課さないとし、その第四号は、給与所得を有する者が勤務する場所を離れてその職務を遂行するため旅行をした場合などに「その旅行に必要な支出に充てるため支給される金品で、その旅行について通常必要であると認められるもの」を挙げています(e-Gov 法令検索 所得税法 https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000033 )。条文は座席の等級で線を引いていません。この記事では、規程に何をどう書くか、普通車の指定席が満席でグリーン車になった差額をどう扱うかまでを扱います。想定しているのは、旅費規程を決める側に回った中小企業の総務・経理の方です。
「社内で払えるか」と「税務で給与にならないか」は別の問い
この二つは分けて見ます。
| 問い | 決めるもの | 決めていないと起きること |
|---|---|---|
| 社内で払えるか | 自社の旅費規程(使ってよい等級、承認の要否) | その場の判断になり、精算の差し戻しと不公平が起きる |
| 税務で給与にならないか | 所得税法第9条第1項第四号の「通常必要であると認められるもの」の範囲 | 範囲を超えた部分が給与として扱われ、源泉徴収の対象になる |
規程で認めていない等級に乗れば、税務上の問題がなくても社内では精算されません。逆に、規程で認めていても、支給額が通常必要と認められる範囲を超えていれば、その超える部分は給与の扱いになります。一方だけ確かめても足りません。
税務が見るのは等級ではなく、通常必要と認められる範囲
国税庁は、出張旅費等特例の資料で「出張旅費等に係る社内規程や基準の有無にかかわらず、また、概算払いによるものか、実費精算によるものかにかかわらず、通常必要であると認められる部分は特例の対象となる」としています。そして「『通常必要であると認められる部分の金額』を超える部分は使用人等に対する『給与』として、仕入税額控除の対象外となる」としています(国税庁「インボイス制度における特例(出張旅費等特例)」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/0024003-138.pdf )。
消費税の側でも、国内の出張のために支給した出張旅費・宿泊費・日当などは、その旅行について通常必要であると認められる部分の金額が課税仕入れになります。海外への出張のために支給したものは原則として課税仕入れになりません(国税庁 No.6459 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6459.htm )。
同じ資料は、この「通常必要であると認められる部分の金額」を所得税基本通達9-3《非課税とされる旅費の範囲》の例により判定するとしています。9-3 は、旅行の目的、目的地、行路や期間の長短、宿泊の要否、旅行者の職務内容や地位等からみて、その旅行に通常必要とされる費用の支出に充てられると認められる範囲内かを判定するとし、勘案するものとして、支給額が役員と使用人の全てを通じて適正なバランスの保たれた基準で計算されたものかどうか、同業種・同規模の他の使用者等が一般的に支給している金額に照らして相当と認められるかどうかの2つを挙げています(国税庁 所得税基本通達 法第9条《非課税所得》関係 https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/02/02.htm )。
グリーン車代で効くのは、この「旅行者の職務内容及び地位」と「適正なバランス」です。等級そのものを可否で定めた条文や通達は見当たらないため、個別の判断は所轄の税務署か税理士に確認してください。
通勤手当ではグリーン料金が外れている。出張旅費はこれと別
混ざりやすいのが通勤手当です。電車・バス通勤者の通勤手当について、国税庁は「グリーン料金は最も経済的かつ合理的な通勤経路および方法のための料金とは認められないため含まれません」としています(国税庁 No.2582 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2582.htm )。
これは通勤手当の非課税の話で、出張旅費とは別の規定です。「通勤で外れているのだから出張でも認められない」とも、「出張は別だから何でも通る」とも言えません。出張旅費は、支給額が通常必要と認められる範囲に収まるかで見ます。
規程には、誰が・どんなときに・誰が承認して使えるかを書く
グリーン車を認めるかどうかだけを書いた規程は、現場で機能しません。決めるのは次の4つです。
| 決める欄 | 書き方の形 |
|---|---|
| 対象者 | 役職区分ごとに、使える等級を書く(指定席まで、特別車両まで) |
| 使ってよい場面 | 片道の所要時間や乗車距離の条件、車内で業務を行う必要がある場合など、条件を文にする |
| やむを得ない場合 | 普通車の指定席が満席だったときにどうするかを、あらかじめ条項に書く |
| 承認と記録 | 事前承認が要るのか、事後に理由を書けばよいのか。誰が承認するか |
金額ではなく、使える等級と条件で決めるのが扱いやすい形です。路線によってはグリーン車が無く、座席の呼び名も揃っていないため、金額で線を引くと区間ごとに合わなくなります。
役職区分で差を付けるときは、なぜその区分なのかを規程に残してください。9-3 が勘案するのは金額そのものではなく、その金額が出てきた基準の立て方です。役員の出張に伴う支給の考え方は役員の出張日当はどこまで認められるかで扱っています。
満席でグリーン車になった差額は、先に決めておく
実際に揉めるのはここです。普通車の指定席が満席で、やむを得ずグリーン車に乗った。差額を会社が負担するのか、本人が負担するのか。決め方は二つあります。
- 会社は普通車の指定席相当額までを支給し、差額は本人の負担とする
- やむを得ない場合として会社が全額を支給する。その条件(満席であったこと、代替の列車では用務に間に合わないこと)を規程に書く
決めていない状態が一番費用がかかります。精算のたびに判断を求められ、人によって結論が変わります。
運用で残すものも決めておきます。乗車した区間、グリーン車を使った理由、満席だった旨のひとこと。申請の欄にこれが入っていれば、後から経理が本人に聞き直さずに済みます。差し戻しを減らす欄の決め方は旅費精算書の書き方にあります。
よくある間違い
- 税務上の問題がないことを確かめて、規程を見ずに精算する。社内で払えるかは規程が決めます
- 規程で認めているから税務でも通ると考える。国税庁の資料は、規程の有無にかかわらず通常必要と認められる部分かで判定するとしています
- 役員だけ無条件に認め、その理由を規程に書かない
- 満席でグリーン車になったときの扱いを決めていない
- 相場の調査結果だけを根拠に等級を決め、自社の規程に書かない。出所の示せない数字は、精算の根拠になりません
まとめ
- グリーン車代が経費になるかは、社内の旅費規程と、所得税法第9条第1項第四号の「通常必要であると認められるもの」の範囲の二段で決まります。条文は座席の等級で線を引いていません
- 国税庁の資料は、社内規程の有無や概算払いか実費精算かにかかわらず通常必要と認められる部分かで判定し、超える部分は給与になるとしています。判定は所得税基本通達9-3 の例によるとされ、グリーン車代で効くのは旅行者の職務内容及び地位と、社内の適正なバランスです
- 規程に書くのは対象者、使ってよい場面、やむを得ない場合、承認と記録の4つです。満席時の差額は、起きてから決めると差し戻しになります
規程全体に何をどこまで書くかは出張旅費規程の作り方にあります。Tabikan は、役職ごとに使ってよい座席の等級を規程の別表として持ち、規程の文面をその設定から組みます。