出張が中止になったときのキャンセル料

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出張の取りやめで出たキャンセル料は、誰が負担するか・どの科目に入れるか・消費税が課税か不課税かを別々に決めます。国税庁の一次情報と、規程・精算書への書き方で整理します。

出張が中止になってキャンセル料が出たとき、決めることは3つに分かれます。誰が負担するか(規程の問題)、どの科目に入れるか(会計の問題)、消費税が課税か不課税か(税区分の問題)です。このうち消費税だけは自社で決められません。キャンセル料のうち解約手続などの事務を行う役務の提供の対価であるものは課税の対象となり、本来得ることができたであろう利益がなくなったことの補填金であるものは資産の譲渡等の対価に該当しないため課税の対象となりません(国税庁 タックスアンサー No.6253「キャンセル料」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6253.htm )。残る2つは自社の規程と運用で決めます。この記事は、中小企業の経理・総務の方が、目の前の1件を処理しながら次回のために規程へ落とすまでの順番を扱います。

誰が負担するかを先に決める

負担者を直接定めた法令や通達は、今回は見つけられませんでした。実務では、出張旅費規程の定めに従って処理することになります。つまり規程に書いていなければ、キャンセルが起きるたびに誰かが個別に判断することになります。

中止の理由で3つに分けると、規程に置く条文の形がそのまま決まります。

中止の理由既定の扱い一緒に決めること
会社の都合(計画の変更、取引先の都合)会社が負担する取消の指示を誰が出したかを申請の記録に残す
本人のやむを得ない事情(急な病気、忌引、災害、交通の乱れ)会社が負担する証明する書類を求めるかどうか、求めるならその様式
本人の都合(私用、自己管理の範囲)規程で決める(全額会社・一部・本人)本人負担とする場合に、どう受け取るか

3つ目を「本人負担」と決める場合、受け取り方を先に決めておいてください。給与から差し引く形にできるかは労働関係の法令に関わり、今回は条文を一次情報で確かめられなかったため、本記事では判断を書きません(要確認)。社会保険労務士か所轄の労働基準監督署に確認してください。本人から別に受け取る形にするなら、回収の方法と期限を条文に書いておきます。

消費税は「手数料」と「損害賠償」で分かれる

ここは自社では決められない部分です。前掲 No.6253 の区分を表にすると次のようになります。

キャンセル料の性格消費税例
解約手続などの事務を行う役務の提供の対価課税の対象になる取消の手続に対する手数料
本来得ることができたであろう利益がなくなったことの補填金課税の対象にならない逸失利益に対する損害賠償
両者を区分せず一括して受け取る全額を不課税として取り扱う前掲 No.6253 はゴルフ場のキャンセル料をこの例として挙げています

損害賠償金の側も同じ考え方です。心身または資産に対して加えられた損害の発生に伴って受ける損害賠償金は、通常は資産の譲渡等の対価に当たりません(国税庁 タックスアンサー No.6257「損害賠償金」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6257.htm )。

実務で効くのは3行目です。請求が1本で来て内訳が分からないなら、全額が不課税として扱われることになります。逆に言えば、内訳を取れるかどうかで控除できる額が変わります。取消の連絡をする人に、次の2つを頼んでおいてください。

  • 手数料と違約金(または払い戻せない運賃)の内訳が書かれた領収書・明細を受け取る
  • 内訳が出ない事業者なら、出ないことをその場で精算書の注記に書く

出張旅費そのものの判定と混ぜない

出張旅費の消費税は、キャンセル料とは別の判定で動きます。国内の出張または転勤のために役員または使用人に支給した出張旅費・宿泊費・日当等は、その旅行について通常必要であると認められる部分の金額が課税仕入れになり、一定の事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除ができます(国税庁 タックスアンサー No.6459「出張旅費、宿泊費、日当、通勤手当などの取扱い」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6459.htm )。海外への出張または転勤のために支給したものは、原則として課税仕入れになりません(前掲 No.6459)。

キャンセル料はこの「通常必要と認められる旅費」ではありません。行かなかった出張の支出なので、No.6253 の性格の判定に戻ります。帳簿と請求書の扱いは出張旅費とインボイスの記事、保存の形は旅費精算と電子帳簿保存法の記事にあります。

返金が先か、キャンセル料が先か

処理が崩れるのは、金額ではなく順序です。払い戻しは多くの場合「手数料を引いた額の入金」という1本の形で来ます。入金額だけを記録すると、手数料がいくらだったのかが帳簿から消えます。

  • 払い戻しは総額と差し引かれた額を分けて記録する。入金の差額として残さない
  • 立替で払っていた分は、本人への返金か会社への入金かを精算書の行で分ける
  • 取消が月末、入金が翌月になるときは、先に取消の事実を記録しておく。入金を待って両方を起こすと、締めをまたいだ分が見えなくなる
  • 決算期をまたぐ場合の計上時期は個別の事情で変わるため、顧問税理士に確認してください(要確認)

科目の選び方そのものは旅費交通費の仕訳の記事と同じ考え方で、行った出張の費用とは別の行にしておくことが肝心です。

規程と精算書に書いておくこと

1件を処理し終えたら、次の4つを規程に足してください。これで同じ判断を繰り返さずに済みます。

書く場所書くこと
出張旅費規程の例外の条文中止の理由による負担者(上の3分岐)と、本人負担とする場合の受け取り方
同じ条文取消の指示を出せる人と、取消を記録する場所
出張申請書取消済みであることと、その理由を書く欄
旅費精算書キャンセル料の行(手数料と違約金を分ける)と、払い戻しの行

規程の章立ては出張旅費規程の作り方の記事、申請の様式は出張申請書の記事、精算書の欄は旅費精算書の書き方の記事にあります。

よくある間違い

  • 全部を不課税で落とす。 内訳があるなら手数料の部分は課税の対象になります(前掲 No.6253)。内訳を取る手間を省くと、控除できる分を捨てることになります。
  • 行った出張と同じ科目・同じ行に入れる。 出張の実績としての単価が混ざり、規程の見直しのときに使えなくなります。
  • 負担者を口頭で決める。 同じ理由のキャンセルで扱いが変わります。規程に3分岐を置けば、判断は1回で済みます。
  • 本人負担を給与から差し引く形で運用し始める。 労働関係の法令に関わるため、確かめる前に始めないでください(要確認)。

まとめ

  • キャンセル料は、負担者(規程)・科目(会計)・消費税(税区分)の3つを別々に決めます。自社で決められないのは消費税だけです。
  • 消費税は、事務手数料の対価なら課税の対象、逸失利益の補填なら課税の対象外で、区分せず一括で受け取るものは全額が不課税として扱われます(国税庁 No.6253)。だから内訳のある明細を取ることが実務の分かれ目です。
  • 行った出張の旅費(通常必要と認められる部分が課税仕入れ・帳簿のみの保存で控除可/国税庁 No.6459)とは別の判定なので、行も科目も分けておきます。

まず、直近に起きたキャンセル1件の明細を開いて、手数料と違約金の内訳が書かれているかを確かめてください。書かれていなければ、次の取消のときに内訳を求めるという1行を出張旅費規程に足すところが、最初の一歩です。